掲示伝道(11月no2)
「富や名声は海水に似ている 飲めば飲むほど渇く」ショーペンハウアー
事業で成功したある方が、重い病気を患い「人間にとっていちばん大事なものは健康である。お金では買えない」と言いました。その後、幸いにも回復されましたが、しばらくして事業に失敗し、あらゆる財産を失ってしまいました。そのとき、彼は「人間にとっていちばん大事なものは、やはり財産だ。財産がなければ豊かな生活はできない」と言いました。その後、再び事業を始め、軌道にのって多くの富を得ましたが、人間関係のトラブルに遭い、家族や友人を失ってしまいました。そこで、彼は「何だかんだ、人間にとっていちばん大事なものは人間関係だった」と言いました。
笑い話のようですが、これは私たちの在り方そのものではないでしょうか。あれが足りない、これが足りないと言って、常に貪って生きているのが私です。いざ求めていたものが手に入って、それで満足するのかと言えば、満足できません。次から次へと欲望が湧き出てきます。そうやって、私たちは欲望を満たせば幸せになれると思って生きていますが、私たちの持っている欲望を満たす方向には、本当に満たされるということがないのです。求めれば求めるほど、迷い苦しむのが〈ほんとう〉なのではないでしょうか。
そのような私たちの相と、本来「自体満足」なる我が身であることを教えてくださるのが仏法の教えなのです。
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