掲示伝道(4月no2)
「 世の中が便利になって
一番困っているのが 実は人間なんです 」 浅田正作師
昔観た『スチームボーイ』という、科学技術の発達とともに、人々の争いが絶えなくなった世界を描いた映画が思い起こされます。現代社会にとても大事な提言をしてくださっている作品です。映画のなかで科学者の老人が「科学が悪いのではない。その科学を扱う人間の心が間に合わないだけなのだ」と言っていた一言が忘れられません。
科学技術が発達し、非常に便利な生活を手にいれた現代人ですが、そのことによって私たちは本当に豊かになったのでしょうか。最近では、AI技術が発達し、チャットGPTなるものが非常に重宝されているようです。多くの人が仕事や学校で人間関係に悩むと、チャットGPTに相談する人が増えているというのです。もはや、道具としてだけではなく、自らの依り処と言っていいような存在になりつつあるという事実に驚愕とします。確かに、そういった科学技術によって生み出されたものは非常に便利なのでしょう。しかし、一方でそれに縛られて苦しくなっているのも事実なのではないでしょうか。
『スチームボーイ』の科学者は、科学が悪いのではなく、その科学技術の進歩に人間の心が間に合わなくなっている問題を指摘していますが、その科学技術の進歩を推し進めているのも人間の心です。「より便利で豊かな社会を」と求める我々の心によって科学は発展してきたのでしょう。しかし、その欲望には限りがないのです。そして、その欲はどこまでも自己中心的な欲望でしかないのです。そのような欲望によって発達してきたものなのであれば、もちろん争いを生むことにもなりますし、そのことによって縛られて苦しむことにもなるのではないでしょうか。
このまま立ち止まることなく、我が思い、我が欲望を追い求める社会に人間の本当の救いは実現するはずがありません。大事なことは、そのような欲望にまみれた我が身を知らされ、「いま・ここ・私」が生かさせていただいているいのちの事実に目覚めさせていただくほかないのではないでしょうか。それは、我が思いによって知らされるではなく、外からの、教えからの眼によって知らされるほかないのではないかと思うのです。
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