掲示伝道(10月no1)
「 手を打てば 鯉は集まり鳥は飛び 下女は応える猿沢の池 」古歌
奈良の興福寺の近くに「猿沢の池」と呼ばれる池があり、その池の辺りで手を打つと、その池に棲む鯉は餌を貰えるかと集まってくる。また、水辺にいた鳥は驚いて飛び立ち、下女はご主人がお呼びかと「ハイ」と応えると云った情景を詠んだ歌と思われますが、手をたたくといった一つの行為が、その音を聞いたものの日頃の業の違いで、それぞれに聞き分け、瞬時に違った行動を起こさせるということでしょう。
私たち人間は、同じ人間であることで、共業といって似た業をもっておりますが、厳密には「十人十色」で、それぞれに違いがあります。ですから、同じ情景を見聞きしても、自分が見聞きしているように他の人も見ているのだと思いがちですが、それは大きな間違いで、同じ情景を見ていてもその人、その人で違った捉え方をしているものです。それを自分が認識しているように他の人も認識しているに違いないと思い込むところに、人と人との誤解や軋轢が生じるのではないでしょうか。
0コメント